永田咲良さん
海田町(カイタチョウ)出身/広島製菓専門学校非常勤助手
プロフィール
ながた・さくら
広島国際学院高等学校を卒業、広島製菓専門学校に入学。2020年、第58回技能五輪全輪国際大会「国大会洋菓子製造の部で優勝を飾り、第46回技能五輪国際大会「WorldSkills Competition 2022 Special Edition」に日本代表として出場。5位の敢闘賞に輝いた。今後は「ヒルトン広島」にてパティシエとして勤務予定。
好きから見つけた自分の夢先輩の姿に憧れ製菓の道へ
広島国際学区員高校にかよっていた頃、卒業したらどういう道に進もうか、少しずつ進路について考えるようになりました。製菓の道を選んだのは、正直に言うと勉強が苦手だったから(笑)。大学進学ではなく、自分の好きなことや興味のある分野は何だろうとつき詰めたところ、趣味のお菓子作りが思い浮かびました。色々と調べていくうちにますますパティシエという仕事に興昧がわき、進学先を広島製菓専門学校に決定。ホームぺージには先輩たちの体験談や作品などが載っていて、そこで技能五輪全国大会(国内の青年技能者を対象にした大会)のことも知りました。「私もこの大会に出て優勝したい」。キラキラと輝く先輩たちの姿を目にして、強く決したことをはっきりと覚えています。それまでお菓子作りが好きだったけれど、真剣に打ち込んだことはほとんどなく、自分の中では大きな決断でした。当初から技能五輪全国大会のことが頭にあったため、先生から大会についての説明を聞き、校内予選にエントリー。無事に通過することができ、全国大会への切符を手にしました。
同郷の先生と二人三脚で特訓した日々
2年生になる春休みに全国大会へ出場が決まったのですが、そこから5月末くらいまでは新型コロナウイルスの影響で、思うように練習ができない日々が続きました。本格的な特訓がスタートしたのは夏前あたりから。授業が終わる16時半頃から毎日調理室にこもり、21時半前後の最終バスの時間まで練習を重ねました。指導にあたってくれたのは、同じ広島国際学院高校出身のクッキック先生。高校も、海田町(カイタチョウ)出身というところにも共通点があって親近感を感じていたのと同時に、熱心に指導してくださることがありがたく、心から信頼を寄せていました。先生の助言はとても的確で、私の得意なところやそうでないところをずばりと見抜いて、何に力を入れたよいか教えてくださいました。この年の作品テーマは「スポーツ」だったのですが、飴細工のモチーフをフィギュアスケートにしてはどうかと提案してくれたのも先生です。飴で白いリボンを引くのは難しいとされていますが、比較的得意だった私に、艶の出し方などプラスアルファの技術を授けてくれました。そうして迎えた全国大会は、緊張するかと思いましたが、とにかく目の前のことで精一杯。無我夢中で作品を仕上げ、ドキドキした気持ちで結果発表を待ちました。コロナ禍のため、発表のある閉会式はオンラインで行われたのですが、告げられたのはまさかの優勝。ホテルで一緒に式に参加していた先生たちと、思わずだきあって喜びました。
折れそうになる心を奮い立たせ世界へ
「技能五輪全国大会に出て優勝する」。それが目標だった私にとって、実現できたことで、一時は抜け殻のようになってしまいました。そこへ追い打ちをかけたのが、収束の気配を見せないコロナ禍。「国際大会が延期になる」「開催されないかも」という話が何度も出て、世界へ挑戦する機会を持っているというのに、気持ちがついていかない日々が始まりました。専門学校はすでに卒業していたので、非常勤助手というかたちで学校に残らせてもらうことに。また、先生の紹介で市内のケーキ屋さんで勤務させていただき、技術研鑽にも努めました。やっと世界大会が開催されるという情報が飛び込んできたのは、1年越しとなった2022年の7月。同年10月の開催日に向け、またもや猛特訓の日々が始まりました。大会へ参加する感覚を思い出しながら、湧き上がってくる「日本を背負って立つんだ」という気持ちが、心を奮い立たせてくれました。大会当日は、世界が舞台ということもあり、予期せぬ苦労もありました。使い慣れない海外の調理器具と格闘し、何とか仕上げた「サーカス」をテーマにした5作品。2日間にわたり、1日7時間の競技時間を闘い抜くことができました。結果は5位となる「敢闘賞」。5位以内に入った、やったぞという気持ちと、3位以内の入賞で表彰台に立ちたかったという思いが色々とないまぜになり、胸がいっぱいになりました。
パティシエとしてスタートいつか故郷の力になりたい
帰国してからは、周りの人たちからお祝いの言葉をかけてもらったり、メディアに取り上げてもらったりして、だんだんと喜びを実感。先日、海田町(カイタチョウ)の西田町長を表敬訪問させていただいたのですが、「ヒマワリの種を使ったスイーツの開発など、ぜひ力を貸してほしいですね」と言っていただき、誇らしく、うれしい気持ちになりました。私が技能五輪全国大会に出場した時、たまたま小中学校の同級生と会場で会いました。違う専門学校ではありましたが、彼女もまた、―流のパティシ工を目指し大会にエントリーしたのだそう。離れていても、同じ志を持つ同郷の友人ががんばっているという事実は、思いがけず私の心の支えになり、「私もがんばろう」とう励みになりました。そんなことも思い出しながら、いつか共に故郷の力になれるような活動ができればと考えています。そして春からは、「ヒルトン広島」でパティシエとしての一歩を踏み出します。大会で感じた喜び、悔しさ、そういった気持ちを糧にして、また新たな場所で精進していきたいです。社会人向けの大会も色々とあるので、現場で技術を磨きながら、次のステップに挑戦していこうと思っています。
MY Favorite 海田のお気に入り
初日の出も美しい日浦山
登山ルートがちゃんと整備されていて、頂上からまちがぐるりと見渡せる日浦山が大好きです。友人と初日の出を見に登ったときには、山から見るご来光の美しさに感動しました。自分の気持ちに迷いが出たときに訪れたら、心がすっきりしそうな場所だなと感います。