古くから伝わる郷土料理「海田さつま」を継承する
海田さつまの会
代表佐々木有紀子さん
メンバー丹波邦子さん
海田町にゆかりのある人を毎月ピックアップし、現在の活動や仕事内容から海田町への思いまで深掘りしていきます。9月号では、海田町(カイタチョウ)の郷土料理「海田さつま」を研究し、その味を次世代へ引き継ぐための周知活動に取り組んでいる「海田さつまの会」をクローズアップ。代表の佐々木有紀子さんとメンバーの丹羽 邦子さんにお話をお聞きしました。
佐々木:「さつま」とは、焼いた魚に味噌やゴマを加えてすりつぶし、ご飯にかけていただく郷土料理です。海田町では江戸時代から伝わっているとされ、呉市や坂町など近隣の地域にも同様の料理があります。また、香川県や愛媛県、高知県、岡山県、大分県などにもさつまと呼ばれる料理があり、地域ごとに少しずつ特色が異なります。例えば高知県ではピーナツを入れたり、愛媛県ではミカンの皮を使ったりもします。魚が水揚げされる沿岸部で浸透してきたのではという説があり、各家庭ごとに味付けや具材が異なるのも面白いポイントです。私たち「海田さつまの会」は、この貴重な郷土料理を次世代につなげていきたいという思いで2014年に発足しました。
丹羽(タンバ):現在は8名が所属していて、私は発足時からのメンバーです。家では代々さつまを食べ継いでいて、私の娘も作れます。けれど、同じ海田町内でも「さつまを知らない」という家庭はとても多くなりました。私が幼い頃は当たり前にどの家でも作られていて、ゴマすりなどの力作業があるため、さつまを作るのはたいてい父親の役目でした。懐かしい“お父さんの味”を、広く皆さんに知っていただきたいですね。
教室や講座を開講、若い世代に期待
佐々木:私たちは普段、海田町内の学校や公民館などで、出前授業や教室、さまざまな講座を開いています。7月28日に福祉センターで実施した親子向け教室では、海田さつまのほかに、鯛のすまし汁と水まんじゅうを作りました。さつまを知ってもらうことはもちろん、そのほかのご当地料理や季節の一品を取り入れるようにもしています。さつまに興味を持ち、参加者の皆さんの豊かな食につながるといいなと思っています。この日は夏休みに入ってすぐだったので親子向けをテーマにはしていましたが、「昔、父親が作ってくれていて懐かしかったから」と、一人で参加した男性の方もいました。「死ぬ前に食べたいものは?と問われたら、さつまかもしれない」とおっしゃっていたのがとても印象的でしたね。
丹羽(タンバ):心強く感じているのは、私たちの活動に数年前から海田高校家政科の生徒さんが加わってくれるようになったこと。7月28日のイベントもお手伝いをしてくれました。海田高校家政科では「課題研究」という授業の中で、「さつまチーム」の皆さんがさつまについて調べたり、さつまを広げる活動をしています。以前、さつまチームの皆さんが『ますやみそ』と共同で「海田さつまの素」という商品開発を行ったことがありました。その際には私たちも監修に入らせてもらい、とても良い経験になりました。若い世代の方たちがさつまについて熱心に調べたり、周知に励んでくれる姿はとてもうれしく、頼もしいですね。
さつまを知ってもらい、輪を広げる
佐々木:私はもともと料理研究家として活動していて、広島市内の仕事仲間から「海田町にこんな郷土料理があるよ」と教えてもらったことがきっかけで、海田さつまの会と縁をいただきました。初めてさつまを見たときは「真っ黒であまりおいしそうじゃないかも」と思っていましたが、実際に食べてみるととてもおいしいんです!ぜひ皆さんにも、さつまの存在、そしてそのおいしさを知ってほしいと思います。今後は、海田さつまの会のメンバーで各地のさつまを知るために研修旅行へ出かけたり、いずれはここ海田町で「さつまサミット」を開きたいと思っています!さつまサミットは目標というより完全な私の夢ですが(笑)、各地のさつまが海田町に集い、そのPRを大々的に行えたら楽しいだろうなと思っています。
丹羽(タンバ):さつまはおいしいだけでなく、魚やゴマ、味噌を使うためとても栄養価の高い料理です。やわらかくて食べやすいので、高齢者の食事にもぴったりだと思います。一番は、さつまを知らない若い世代の方に食べていただきたいので、まずは海田町内の学校給食に取り入れてほしいと思います。そして私たちは、今後も変わらずさまざまな場所で教室や講座を開いていく予定です。興味のある方にぜひご参加いただき、一緒に“さつまの輪”を広げていけたらと思います。
