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今をときめくまちのあの人に会いに行く ボリューム36

海田町(カイタチョウ)にゆかりのある人を毎月ピックアップし、現在の活動や仕事内容から、海田町(カイタチョウ)への思いまで深掘りしていきます。

5月号では、千葉家の13代目当主である多田貴志子さんに、旧千葉家住宅の歴史や、後世に残していくための活用方法、今年建築250年を迎える座敷棟についての思いを聞かせてもらいました。

多田 貴志子さん

千葉物流倉庫代表取締役 千葉家13代目当主

宿場町として栄えた海田 宿駅の要職を務めた千葉家

私の生家である千葉家は、もとは大内氏、その後は小早川氏や毛利氏に仕えた武士の一族です。広島城下で商家を起こし、近世初頭に海田へ来往。海田では宿駅業務を担ったほか、のちに組頭役や年寄役を兼ねる有力町人でした。幕末までは家業として酒造業を営んでおり、そのほかに屋敷内に休所を設けて、街道を往来する疲れた旅人や村内の困窮者に茶や麦粉をふるまっていたそうです。明治に入ってからは街道制度が廃止され、海田のまちは大きく変化。千葉家は酒造業を辞め、材木商や倉庫業など新たな事業を起こして苦しい時期を乗り越え、それが現在の会社の礎となっています。近世山陽道(西国街道)が最もにぎわっていた頃、海田市(カイタシ)には街道を通行する諸大名などの休泊の場として、「御茶屋(本陣)」や「脇本陣」が点在。千葉家はこれらに次ぐ休泊所として扱われ、多くの上級武士や大名が訪れました。襖絵や欄間には趣向が凝らされ、本座敷からは四季折々の風情が楽しめる庭を一望できます。床の間を備えた浴室や、刀掛けがある厠など、往時の姿がそのまま残る家屋から、今でも当時の様子を伺い知ることができます。千葉家ではこの住宅を代々大切に守ってきたのです。

教育の場として活用、後世につなぐ

先祖から受け継いできた邸宅は、ときに接待の場として、ときに歴史を伝える学びの場として活用してきましたが、維持の負担はかなりのもので、先代である千葉諭吉が海田町(カイタチョウ)への寄贈を決意。町役場が快諾してくださり、町に託す運びとなりました。町役場をはじめ、郷土史会など、千葉家の歴史や住宅について私たちよりも深く学ばれているかたが非常に多く、愛着を持ってくださっている様子に大変感激したものです。先代、そして私が住宅を託すにあたって願ったのが、「後世につないでいってほしい」「教育の場として活用してほしい」ということ。海田町(カイタチョウ)は私たちの思いを汲んでくださり、かねてよりおこなっていた、小学生たちが学校で学ぶ「昔の暮らしを知るカリキュラム」の際に開放したり、定期的な一般公開日に合わせて、昔の暮らしや和文化をテーマにしたイベントを開催したりしており、こちらも好評だそうでとてもうれしく思っています。イベントは現在親子向けのものが多く、そこにも町の担当者の方の「親子で一緒に千葉家や西国街道の歴史に触れることで、次代につながるように」という思いがあると知り、大変ありがたく感じました。昔の暮らしを体感しながら、当時の不便さや、だからこそ育まれた物を大切にする姿勢、あるもので生活するといった知恵や工夫を感じ取ってもらえたらと思います。

町のシンボルとして迎える250周年

1991年に書院が広島県重要文化財に、泉庭が広島県名勝に指定されている旧千葉家住宅ですが、貴重な文化財であると同時に、私にとっては思い出の詰まった場所。かつては隣接した建物に祖父母が暮らし、幼い頃は、池に入って鯉を追いかけまわして遊んでいたものです。時代が変わっても、家のそこかしこには、家族の暮らしぶりや思いが息づいていると感じます。例えば客人から最も良く見えるように配された庭の意匠、目を楽しませる襖絵や欄間の工夫には“おもてなしの心”が、ウサギや雲竜のモチーフには、繁栄と末代までの幸せを願う“福徳円満の心”がにじみ出ています。1945年8月6日、広島には原爆が投下され、人々の営みやそこにあった幸福、未来への希望が一度に奪われました。もう戻ることのない美しい建物も残念ながら数多く消失してしまっています。爆心地から離れているため損壊を逃れた旧千葉家住宅には、歴史や人々の思いをつないでいく役割があると考えています。2024年は、旧千葉家住宅にとって250周年の節目。広島の文化と絡ませた企画も複数計画されているようなので、これまで歩んできた町や千葉家の足跡に思いを馳せつつ、ぜひ多くの方に足を運んでもらえたらうれしいです。

MY Favorite 海田のお気に入り

町への思いが強い、温かな人たち

歴史を学ぶ会やまち歩きのボランティアグループなど、町について積極的に知り、広めていきたいと願う熱心なかたたちが非常に多いと感じます。旧千葉家住宅も、そのようなかたたちに支えられてきました。そんな情熱的で温かな人たちが町の魅力のひとつだと思います。

出演者募集

かいたブランド課(役場3階)

電話番号823-9212メールアドレスbrand@town.kaita.lg.jp

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