〈テーマ〉 こどもと若者のサードプレイス ~あなたらしいちょうどいい日々を~
こうわシンギュラリティ高校ひまわりプラザ1階ロビーで、今年3回目の町長タウンミーティングを開催。教育や医療を通じて居場所づくりに取り組むお二人とともに、今、求められるこども・若者のサードプレイスのかたちを探りました。
海田町長 竹野内 啓佑
10年後、誰もが憧れるまちをめざし、日々奮闘中。お気に入りのサードプレイスは、屋外では癒やしの空間「瀬野川河川敷」、屋内では読書に没頭できる「カフェ」。
医療法人社団湧泉会(ユウセンカイ) ひまわり歯科院長 岡本 佳明さん
院長を務めるひまわり歯科は、日本歯科医師会が提唱する地域支援型多機能歯科診療所のモデル医院。管理栄養士が常駐し、口腔ケアの観点から栄養指導を行うなど独自の取組も行って(オコナッテ)いる。
学校法人幸和学園(コウワガクエン)理事長 新谷 耕平さん
町内でこうわ認定こども園と放課後児童クラブを運営する学校法人幸和学園(コウワガクエン)理事長。この春、通信制高校のシンギュラリティ高校を開校。自由度の高い独自のカリキュラムで新しい教育方針を提案している。
医療と教育、それぞれのサードプレイスづくり
まずはゲストのお二人が現在取り組んでいるサードプレイスづくりの事例についてご紹介いただきました。
最初に登壇したのは岡本 佳明さん。持続可能な地域医療をめざし、歯科医師、歯科衛生士の教育にも力を注ぐ一方で、地域の“健康を支える場所”としての居場所づくりにも取り組んでいます。
「病院に行くほどじゃないけど、相談したいことがある」そんな時に気軽に行ける場所をつくりたいと思い、令和元年に「暮らしの保健室すまいる」を立ち上げました。令和4年には「タニタカフェ」さんとのコラボカフェ「ひまわりカフェ」もオープン。地域の人の居場所として多くの人に利用いただいています」と顔をほころばせました。
続いて登壇したのは、学校法人幸和学園(コウワガクエン)の新谷 耕平さん。
自身が運営するこども園の卒園児が、小中学校で不登校になっていると相談を受けたことをきっかけに、平成28年、通信制高校のサポート校の運営をスタートしました。
ニーズは想像以上に大きかった一方で、学費の負担やスクーリングの制約といった課題もあったことから、新谷さんは通信制高校の設置認可を取得し、「シンギュラリティ高校」を設立しました。
現在、広島県内には約8万人の高校生がおり、その約1割の8千人が通信制高校を選んでいるとした上で「これから学びのスタイルはもっと多様になっていくはず。だからこそ、8万人の高校生全員にとって“魅力的な選択肢”となる学校をめざしたい」と抱負を語りました。
サードプレイスに求められるもの
お二人の取組を聞いた上で、後半はさらに「サードプレイス・居場所づくりに何が必要か?」という話題に発展しました。
医院で働く多くの女性を見て、女性が職場とプライベートを切り分けることの難しさを実感したという岡本さんは「職場にこそ居場所が必要」と語ります。その思いから、一人一人に役割と輝ける出番がある“村”のようなコミュニティづくりを大切にしているといい、具体的には出産や育児、介護など、ライフステージに応じた働き方ができるよう職場環境を整えるなどして、産休後の復職率はほぼ100%を達成したそうです。
「ひまわり歯科には女性のロールモデルがたくさんいる。若い人たちにとって“こんな働き方もできるんだ”という希望になっていると思う」と、笑顔で語りました。
一方、新谷さんは、スマホでAIやDX、動画編集ソフトまで自在に使いこなす10代の姿を見て、「今の10代は感覚も価値観(カチカン)も僕たちの世代とはまるで違う。おそらく彼らは用意された居場所は求めていなくて、自分たちの手で居場所をつくろうとしているのでは」と語り、だからこそ「大人は行き止まりをつくらず、彼らがのびのびと力を発揮できるように、可能性をひらいてあげたい」と力を込めました。
海田町の強みを生かしたサードプレイスとは
サードプレイスづくりをめぐる話は尽きない中、最後に町長から「海田町ならこんなサードプレイスや居場所をつくれるんじゃないか」という提案を聞かせてほしいと求められ、岡本さんは「海田町は若い世代も多いので、その感性やエネルギーを引き出すようなアートのある風景をもっと増やしてほしいですね」と回答。
新谷さんも「人口や面積の広さなど、恵まれた経営資源を生かして大学や大学院のような高等教育機関を誘致してほしい。高等教育機関ができれば研究所やIT企業も集まってくるなど発展性もあるし、若者はもちろん、中高年の学び直しの場にもなる」と、海田町(カイタチョウ)の未来に期待をにじませました。
それぞれの提案を受け、町長は「お二人のような方々と官民、民民の連携を生かしながら、仕事や子育て、教育の場における居場所を増やして、“ひとにやさしい、ヒューマンスケールなまち”を、皆さんと一緒につくっていきたい」と抱負を語り、イベントを締めくくりました。
