町長自ら出向き、これからの海田の“みらい”を考えるヒントを探る町長タウンミーティング。4月28日月曜日に訪れたのは、JR海田市駅近くにオープンしたカフェ「brique rouge」。ランチやカフェを楽しむお客様もおられる中、新谷知紀さん(DE LA MER/brique rouge店主)、三澤正明さん(三沢管財/MOLERS店主)とともに、「魅力的なまちはどうつくる?」という問いを手がかりに、海田町の未来について熱く語り合いました。
《brique rouge 新谷知紀氏》
ホテルでパティシエとして活躍後、海田町内にDE LA MER焼き菓子店をオープン。食材とお店の雰囲気にこだわりぬいたお店は人気店となり、多くのお客さんで賑わっています。2025年4月、2店舗目となるカフェbrique rougeがオープンしました。
《MOLERS 三澤正明氏》
JR海田市駅から徒歩7分の安芸区船越に2024年11月にオープンした本屋,喫茶,アートのお店MOLERS。本業の不動産貸付業の傍ら、このエリアにおしゃれな店舗を誘致して、暮らしやすくなるまち、訪れたくなるまちの拠点にしたいとお店をオープン。海田町にポテンシャルを感じ、様々な企画を検討中。
《海田町長 竹野内 啓佑》
生まれも育ちも海田の生粋のかいたっ子。自らも育った海田町に恩を返したいと令和5年に海田町長選挙に立候補し、当選。一級建築士としての行政経験を活かしながら、10年後、誰もが憧れるまちを目指し、日々奮闘中。
写真左より竹野内町長、新谷さん、三澤さん
竹野内町長:
おふたりともJR海田市駅周辺に店をオープンされていますね。この場所を選んだ理由や、海田町の印象からお聞きかせいただけますか?
新谷さん:
海田町にはカフェがほとんどなかったので、「誰かの居場所になるようなカフェをつくりたい」と思って立地を考えたときに、駅の近くなら車を持っていない若い人たちも来やすいし、JR海田市駅は山陽本線と呉線の両方が通っているので、広島市内や西条・呉方面からもアクセスしやすいのではと考えました。いわゆる「サードプレイス」みたいな、そういう居場所的な存在ができたらいいなと。
三澤さん:
JR海田市駅のアクセスの良さは、大きな魅力ですよね。一方で、他の市町の人からは「通り過ぎるまち」といわれることもあって、じゃあどんなまちだったら、行ってみたくなるのかなと考えたとき、僕は歩いて行ける距離に“いい店”がたくさんあることだと思ったんです。じゃあ、“いい店”はどんな店かというと、魅力的な店主がいて、人との出会いがある店。店に行く目的がモノを買うだけじゃなく「人に会う」ことが目的になると、お客様は何度も通ってくださるんです。
新谷さん:
確かに、僕も「この人から買いたい」と、人を基準に店を選ぶこともあるし、自分の店のスタッフにもファンがいて、そういうお客様はリピートしてくださいますね。
竹野内町長:
「いい店は人がつくる」という話は、今回のテーマを考えるうえで大きなヒントになりそうですね。
三澤さんが営む本と喫茶とアートの店「MOLERS」はJ R海田市駅から徒歩約7分の船越にある。
三澤さん:
たとえば僕の「MOLERS」や新谷さんの「brique rouge」が、人と人がつながる場になれば、お客様にとって店が「居場所」になる。そういう居場所ができると、暮らしが本当に豊かになるんですよね。そのうち「この店があるここに住みたい」とか、「brique rougeさんの近くにお店を出したい」と思うようになる可能性だってあるわけです。
竹野内町長:
なるほど、そうした時に役場ができることは、規制緩和と行政の広報を活用した情報発信の2つかなと思うんですが、事業者視点で「もっとこうしてほしい」という要望や提案はありますか?
三澤さん:
確かに、消防法や建築基準法といった規制が、店を始める人にとってハードルになることが多いので、規制緩和をしてもらえると嬉しいですね。逆にそれ以外は何もしなくて大丈夫というか、とにかく民間の力を信じて支援してほしいと思います。
竹野内町長:
おっしゃる通り、規制が出店意欲のある人の邪魔をしないよう、やりやすい環境を整えることこそが行政の役割ですね。
新谷さんはいかがですか?
「brique rouge」は、店名の由来でもある赤レンガ模様のレトロビルの1階にある。
新谷さん:
私はパティシエとして10年ほど働く中で、製菓の技術と店を続ける経営力はまったく別次元だと痛感したので、商工会さんと連携した経営塾を開催するなど、個人店の経営面を支える仕組みや支援があるといいなと思います。
三澤さん:
帳簿の付け方や確定申告については商工会さんにお願いして、SNSの運用方法など現代に合ったアドバイスや支援は、新谷さんのような若い経営者に指導してもらうのもいいかもしれませんね。
竹野内町長:
確か、DE LA MERさんのインスタのフォロワーは2万9千人でしたよね。ちなみに海田町のFacebookは900人かな(笑)。情報発信のコツなどぜひ教えていただきたいです。
新谷さん:
SNSは主に妻の担当で、投稿のタイミングや写真の使い方などふたりで色々相談しながら運営していますが、一番意識しているのは、僕たちの仕事はお客様が来てくださってこそ成り立つ仕事なので、そういう心から感謝の気持ちを伝えるようにしています。
竹野内町長:
これは僕自身の反省でもあるのですが、行政の広報や情報発信は「血が通ってない」と感じることが多いんです。店舗誘致も情報発信も「ちゃんと結果をだせなかったら誰も海田町を選んでくれなくなるぞ」という危機感を持って、感情に訴えるような発信や営業活動をしていかないといけないと痛感しました。
竹野内町長:
おふたりのお店のような取り組みが、JR海田市駅周辺で次々と生まれるようにしたいと思うのですが、そのためには行政としてどのようなアプローチ方法があると思いますか?
新谷さん:
たとえば、東京の表参道なら「お洒落なまち」、渋谷なら「若者のまち」というように、パッとイメージが湧くまちってありますよね。海田町も、そんなわかりやすいイメージをつくって発信していけば、「その雰囲気が好き」と感じる人たちが集まってくる気がします。
三澤さん:
その“イメージづくり”とあわせて、広島のタウン誌などで海田町の特集を組んでもらうなどできれば、さらに人が集まって、「ここでお店やってみたいな」と思う人も現れるかもしれませんよね。実は今ちょうど、海田町内でお店を出しやすい仕組みや物件を整えているところなので、そういった取り組みも一緒に紹介できれば、より良い流れが生まれるのではと思います。
竹野内町長:
そうやってチャレンジしやすい環境を整えてくださっているのは、本当に心強いです。私たち行政も、規制緩和などできる支援を通じて積極的に応援していく。そういうポジティブな姿勢があってこそ、魅力的なお店が増えて、まちに賑わいが生まれるのだと思います。今日は海田町の未来に期待を感じるお話をたくさん聞くことができました、ありがとうございました。
ゲストのおふたりの話に熱心に耳を傾け、ときおりメモを取りながら真剣な表情を見せていた竹野内町長。最後は、新谷さん、三澤さんとともに会場やYouTubeから寄せられた質問にしっかり答えて、イベントは無事終了。「brique rouge」の居心地の良さも相まって、終始あたたかな雰囲気に包まれたひとときとなりました。
「竹野内町長のタウンミーティング」は、第5次海田町総合計画後期計画策定に向け、今後も様々なジャンルで活躍されている皆さんのお話を聞かせていただきたいと考えています。次回もご期待ください。