1-2 町債(町の借金)の現状と課題
財政状況の問題点を洗い出し、今後の財政運営のあり方を検討するためにも、財政硬直化の要因となった町の借金の状況について、詳しく分析してみます。
(1) 町債発行額(借金額)、公債費(借金返済額)、及び町債(借金)残高の推移
地方交付税財源の不足に対応するために平成13年度に創設された臨時財政対策債の影響に加えて、平成14年度から平成16年度の3年間で合併を前提として多額の町債を財源に大規模な建設事業に取り組んだことから、町債残高が急増しました。
そして、町債残高の急増に伴い毎年の公債費も右肩上がりに増大し、町財政を圧迫しています。
(2) 公債費(借金返済額)の推移と繰上償還
平成11年度から平成13年度にかけて、大規模な繰上償還を実施したことにより、平成12年度から平成14年度にかけては公債費が減少に転じました。しかしながら、平成14年度から平成16年度に多額の借金をしたことにより、平成15年度以降、公債費が急激に増加しています。
財政健全化のため、地域福祉基金を取り崩すなどして、平成17年度と平成18年度にも繰上償還を実施し、町債残高の減少を図りましたが、公債費はしばらく高止まりとなり、その間非常に厳しい財政運営を強いられることが予測されます。
合併を前提とした大規模事業への先行投資により、福祉センターの建設や道路・公園整備などの都市基盤整備は大幅に進みました。
しかしながらその一方で、平成14年度に約8億円であった公債費は、平成19年度には約13億円と、わずか5年の間に約5億円(1.6倍)も増加しました。
新たな歳入増加が見込めない中で、公債費が5億円増加した部分は、人件費や投資的経費などの歳出削減を図り、それでも財源が不足する部分は基金を取り崩すこととなります。
(3) 悪化する「財政指標」
町の借金に関する財政指標は、繰上償還により一時期改善をしていましたが、平成14年度から平成16年度にかけて多額の借金をしたことにより、悪くなる傾向にあります。
- 【公債費比率】
- 毎年度の元利金の支払いに要する経費「公債費」の一般財源に占める比率です。この指標が高くなるほど財政構造の弾力性が圧迫されているということがいえます。
- 【起債制限比率】
- 地方債は後年度に財政負担を残すものであるから、公債費等をもとに算定した比率において、一定以上の比率となった地方公共団体の起債を制限するためのものです。20%以上になると地方債の発行が一部制限されます。
- 【実質公債費比率】
- 従来の起債制限比率には反映されなかった特別会計などの借金返済のために一般会計から繰り出した額なども含んで算出される新たな財政指標で、平成18年度から導入されました。18%以上になると地方債を発行する際に、財政運営の計画を立てたうえで国や県の許可が必要となります。
(4) 今後の課題と対策
財政状況が厳しくなった要因を整理すると、
といえます。
ですから、財政状況の改善のためには、その逆の
に積極的に取り組む必要があります。
財政状況改善のための目標の一つとして、プライマリーバランスの黒字化が挙げられます。
プライマリーバランスが、黒字なら町債に頼らず行政サービスをまかなえていることになり、赤字の場合、町債残高がどんどん増えていくこととなります。
平成17年度以降は、町債の発行抑制に努め、繰上償還も実施したことから、赤字から黒字に改善されています。
プライマリーバランス=(歳入-町債)-(歳出-公債費)
- プラス ⇒ 過去の借入れを積極的に返済(現世代が受益以上に負担)
- マイナス ⇒ 投資的経費の増大、町債残高の増加(将来世代に負担を転嫁)